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渡辺 眸 『TEKIYA 香具師』

1960年代後半、東京のテキヤに
ふとしたきっかけで出会い、
三年にわたって追い続けて撮った貴重な記録

「TEKIYA 香具師」渡辺眸 2017.11.18発売
出版社:地湧社 定価[本体2,900円+税]

写真展 2017年11月18日より
Zen Foto Gallery(六本木)
渡辺眸 写真展
TEKIYA 香具師

2017.11.18発売

TEKIYA

まだ写真学生だったころ、富士山の山開きに呼応して7月1日にかかる地元十条の縁日〈お富士さん〉を撮ろうと、前日にロケハンに行った時であった。商店街から100メートルほどの長い道に不穏な群衆が動いていた。
時には荒々しく、うずまく男たちの熱気と狂気と惰気。私はすぐ自宅に戻りカメラを取り出し、現場にとって返した。
夢中でシャッターを切った。10分近く経った頃だろうか、私は男たちにかこまれていた。「あんた写真なんか撮ると半殺しなるヨ」とどなるオバさんがいた。一発くるかと思っていると、親分格らしい一人が「俺を撮ってくれ」と言いながら体臭をむんむんさせて近づいてきた。これで形勢は逆転。それから私のテキヤ街頭写真師がはじまった。(中略)
「ミイラ取りがミイラになるな」と心よく被写体になってくれた姐さん、兄さん、オヤジさんたち、本当にありがとう。

渡辺 眸

Profile

渡辺 眸

渡辺 眸◎わたなべ ひとみ
東京都生まれ。明治大学・東京綜合写真専門学校卒業。
1968年、卒業時の制作展で「香具師の世界」を発表、その後も撮り続けて『アサヒグラフ』『写真映像』に作品が掲載される。同じ頃、ベトナム戦争や国際反戦デーなど若者たちのパワーみなぎる新宿の街や、全共闘ムーブメントの中心・バリケート封鎖された東京大安田講堂を内側から撮影、独自の視点で1970 年前後の都市と人々の空気をフィルムに焼きつける。
1972年、アジア各国に旅立つ。以後、幾度かにわたって行き来を繰り返し、1983年、インド・ネパールでの魂の軌跡をまとめた写真集『天竺』を発表。

写真集:『天竺』(野草社1983)、『猿年紀』(新潮社1994)、『西方神話』(中央公論新社1997)、『てつがくのさる』(ナピポ2003)、『東大全共闘1968-1969』(新潮社2007)『1968新宿』(街から舎2014)、他。

白い上っ張りのテキヤ

江戸=東京には近世から縁日市が多く、一の日(1,11,21日)はどこの稲荷、二の日は、というように縁日を渡り歩いて露店商いをして暮らす「てきやさん」がいた。縁日の合間には、祭礼や年中行事での出店を挟み込む。1960年代の東京地方では、まだそのような商いが十分に可能だった。この写真集の被写体の多くは東京ローカルのテキヤ集団に所属する零細商業者としてのテキヤだと考えられる。テキヤは香具師(やし)ともいわれるが、現代の東京地方ではテキヤといういい方が一般的である。(中略)
1968年にテレビ番組で誕生し、のちに映画館で親しまれた渥美清が演じる国民的スター「寅さん」そのままの白っぽい木綿シャツに腹巻、帽子というテキヤが、この写真集には見られる。1975年生まれの私の知るテキヤに寅さんのような服装の人はいなかった。ただし昔かたぎのテキヤは、商売の時には、食堂のおばさんが着るような白い上っ張りを、着ている服の上に羽織っていた。もちろんきちんと洗濯してある。東京の路上は埃っぽくて、一日商売をしていると、鼻の穴の中は真っ黒になり、髪の毛は塵やほこりでバサバサになる。白い上っ張りは、飲食物を衛生的に扱っているので安心して買ってほしいという、テキヤの素朴なアピールのようだった。(中略)

厚 香苗◎あつ かなえ
1975年東京都墨田区生まれ。総合研究大学院大学文化科学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学/総合研究大学院大学)。専門は文化人類学・民俗学で立教大学文学部ほかの非常勤講師。単著に『テキヤ稼業のフォークロア』(青弓社)、共著に『現代都市伝承論?民俗の再発見』(岩田書院)等がある。

1960年代後半、東京のテキヤに
ふとしたきっかけで出会い、
三年にわたって追い続けて撮った
貴重な記録

渡辺 眸 『TEKIYA 香具師』

2017.11.18発売
出版社:地湧社 
定価[本体2,900円+税]
226mm × 148mm / 96頁、上製本
ダブルトーンモノクロ写真103点
テキスト 厚 香苗:博士(文学/総合研究大学院大学)

TEKIYA 香具師

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